サイクリング編
1 決断
2 ヒッチハイクの極意
3 ポルシェは快適
4 作戦
5 天敵
6 タスマニアへ行こう
7 時間にルーズ
8 タスマニア上陸
9 予定変更
10 車が来ない!
11 別れる
12 飛ぶ
13 Hobart
14 その声は
15 ライバル登場
16 またね
17 炎天下の出来事
18 タスマニア最後の夜
19 いゃっほーっ
20 シドニーへ帰還
21 北へ
22 山崎日本へ帰る
23 グリーンアイランド
24 ケアンズの夜は更けて
25 イナゴ大発生
26 エヤーズロック
27 アリスの風
28
ツアー編

その21   北へ


ブーとダーと別れを告げ、北へ向かうことに。
とりあえず目的地はブリスベーンからケアンズ。
何台かの車を乗り継ぎ、何日か掛かってブリスベーンに到着したものの、途中いやな話を聞かされて、野宿するのが怖くなった。
寝袋の中は体温で温かいので、ヘビが入ってくると言われたのだ・・・・。
自転車で走っているときはテントを張って、その中で寝ていたのだが、一人で旅行するようになってから野宿するときは適当な場所に寝袋だけで寝ていたのだ。
いずれにしても寝ないわけにはいかないので、寝袋を出して寝る体制に入るものの、すぐに何かの物音に対して目が覚めてしまう。
オーストラリアというところはとにかく野生動物が多いところで、夜になるとガサゴソ活動してくれる。
いよいよ寝不足になってしまい、ブリスベーンのユースホステルに到着してからそのユースホステルでは、それまで眠れなかったツケが溜まっていて、2日間食事も取らずぶっ通しで眠ってしまった。
あまりに長く寝ているのでユースホステルの管理人が心配して起こしにきてくれた。
 長く寝すぎるとかえって疲れてしまい、体中がだるくて仕方がない。
何か行動しないとこのままモノグサ太郎になってしまいそうなので、とりあえず映画へ足を運ぶことにした。
オーストラリアという国は映画館さえ日曜日には閉めてしまうほど労働組合の力が強く、人よりたくさん働くことはしないし、きっちりと休暇を取る。
困ったのは労働者の賃金闘争によるストライキがシドニーで行われたときだ。電車は止まるタクシーは走らない、バスさえ走らないといった有様で、マイカーを持たない人や我々旅行者には不便極まる事態ではあった。
話はまたまた横道へ逸れてしまったが、幸いにして今日は土曜で映画館は開いていた。
土曜日ともなると着飾った夫婦連れが大挙して映画館へやってくる。一人で映画館へ行くのがみっともないくらいで、二人連ればかりが目に付く。
 三船敏郎とアランドロン、マンダムのおっちゃん(チャールズ・ブロンソン)が西部劇に登場している「レッドサン」がちょうど掛かっていたので、観る。
もちろん日本語の字幕がないのだが、なんとか聞き取れるまでにはなっていたので、大体のストーリーは判った。
ユースホステルへ戻ったら、オーストラリアの学生とチェスをしようということになり、僕は生まれて始めてのチェスだったので、まず駒の動かし方やルールを教えてもらった。
将棋とほとんど同じなので飲み込みは早く、意外にも二局目で彼に勝ってしまった。
彼は「すごい、すごい」と僕を褒めてくれ、素直に負けを認めた。
横で見ていたドイツから来てる旅行者のカークが、次に僕と対戦。
彼はすごく巧みに攻め、僕を負かしたが、自分のことより僕が今日始めて覚えたチェスでカークを悩ませたことを盛んに褒めた。(僕は将棋は強いほうだと思うから当然なんだろうけど・・・)僕もカークのチェスは本当に強いと思った。彼に将棋を教えたら僕が負けていただろうと思うほどに。
そこに通りかかったアメリカから来ている女性(名前は知らない)が、盛んに僕とやろうと言う。
「わたしはチェスにかけてはちょっとうるさいのよ」とか、「わたしに勝てる人はそんなにいないのよ」とか言いながら駒を揃えている。
そんなに強い人が今日覚えたばかりの人を捕まえて相手させなくてもほかに沢山カークのように強い人がいるのに・・・と思ったけど、こんな高慢ちきな奴を負かせてやることに
異常な能力を持ったわたくしではありますので、ごく短時間にあっさりと勝ってしまいました・・・・・・・・・。
きっと彼女は対戦前にあれだけ強い強いをアピールした分だけ、初心者にあっさりと負けてしまって、プライドにキズが付いたことでありましょうけど、再度挑戦とは言わず、「わたしは今日調子が悪かったのよ」と言い残して去っていきました。
僕とカークは目と目でお互い同じ事を感じたようで、彼女が去った後に二人もう一度目を合わせた瞬間大笑いをしたものです。
それから夜中までカークと僕はチェスを楽しみましたが、一度として彼には勝てなかった。
この一件から僕の中にはアメリカ人は負けを認めない、オーストラリア人、ドイツ人は勝っても相手を褒める。特にドイツ人は謙遜するという日本人に似た性格を持っていることに気が付いた。
まあ、すべての人がそうだとは思わないが、まず誰か海外の人と出会ったとき、相手の国を聞くと、そんな偏見に似た見方が頭をよぎるようになってしまった。


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