その35 Iron Knobにて切れる
Eyre Highway
まあ時間の問題だったといえばそうなのだが、ここ、Iron Knobにたどり着いてテントを適当な場所に張り、僕一人で食料の買出しに出た。
山崎は暑さと疲労のため、ここ最近は飲みに行く時以外は動こうとしないため、最近一人で買出しというのが増えてきている。
ほりけんにすれば、このあたりも苛立ちの原因ではあるのだ。
同じ気候の同じ条件のところを同じ距離走っているわけで、私も同じに疲れているのだが、山崎は自分だけが疲れているように思っているらしい。
あいにくここIron Knobにはスーパーマーケットはおろか、食料品を売っているようなところは皆無で、小さな雑貨屋が一件ポツリと建っているのみ。
仕方が無いので、その雑貨屋に入って、食料品が買えるようなところが無いか聞いてみたが、そこのおばさん自体が、PortAugastaまで買いに行くくらいで、この町にはそれは存在しないという。
今来た道を引き返して晩飯を買い出すなんてことは出来ません・・・・・。
このあたりが、オーストラリアを自転車で横断するということに対してまだまだ我々が無知で愚かであった部分なのだが。
この雑貨屋のおばさんはわたしの困った顔を見て、「じゃあ私が何か食べる物を作ってあげる。」と言ってくれたのだ。
まさに天の助けと言うべきか。
おばさんが用意してくれたのは、ふっくらしたパンにハムとレタスを挟んだサンドイッチであった。
この小さな町で知り合った天使のおかげでちょっとは機嫌が直り、テントへさっそうと引き返す。
そこで待っていたのが山崎のこの言葉。
「パンか・・・・・。パンを食わせるならなぜジュースも一緒に買ってこないんだ!」
ブチッ! どこかで僕の何かが切れた音です・・・・・・・・。
こいつ、寝ている間に殺す・・・・・・。
このサンドイッチの中にどれだけの僕の苦労やおばさんの愛情が含まれているのかこの男に説明するのもバカらしく、説明やいいわけをする前にこの世から抹殺するほうが世のため、人のため。
バックの中に入れていた登山ナイフをいつでも使えるように取り出しやすい一番上のところに入れなおした。
今夜でこの男ともお別れだ。
だが、僕にとっては記念日だ。
遺体はそのあたりに埋めておこう。
砂漠の真ん中だし、誰も気が付かないだろう。
などと考えながらベットに就く。
しかし、考えとは裏腹に日中の気温と走行の疲労が祟り、熟睡してしまい、計画は流れた・・・・。
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