その49 パースは遠く

二人で丘を一気に駆け下りる。
もうすでに気持ちはパースに到着している。
パースには日本を出る以前から高校の担任から紹介されている知人が居るので、気分が楽で足取りも軽い。
アデレードを出て以来、オージーの家に厄介になったことが無いので、久々にゆっくりと足を伸ばし、温かいベットで寝ることを考えている。
テントの中で寝ることには慣れてしまったとはいえ、小石のゴロゴロした地面にナイロンシート一枚の上に寝袋では朝起きたときに身体が休まってはいないのだ。
さて、丘を降りてみて初めて気が付いたが、丘の上から見えた町はパースでは無かったのだ。

まだ10マイルも走らないといけない・・・・・。
すなわち16キロ程度まだ残っているのだ。
マラソンで言うなら1/3の距離が残っている。
一度に足が重くなった。
やっと開放されると思った土曜日に残業を言い渡される思いだ・・・・・。
そのうえ、住所を頼りに知人の家を探すという仕事がまだ残っている。
とにかく走らないと前へ進まない。
今日、これほど道のりが長く、遠くに感じたことは無かった。
さて、いよいよ知人の家を訪ねることが出来たわけだが、このころになると大分語学力に自信が持てる状態で、相手の言っていることが殆ど理解できる。
理解できるからこそ、この一言はあまりにショックが大きくて、思わず山崎の顔を見てしまった。
「君たち、今日は何処に泊るの?」
山崎もこちらを見て、多分僕もそんな顔をしているのだろうなという顔をしていた。
いかにも落胆を隠せない顔つきを。
山崎は言った・・・・・・・・「ユースホステルを予約しようと思ってます」と。
その知人はユースまでの道のりを丁寧に教えてくれたのだった。
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